取材対象がまったく同じでも、伝え方によって与える印象はまったく異なるという良い例のような気がする。
メディアの力は恐ろしい。

北野監督の「TAKESHIS’」公式上映…反応はイマイチ

 【ベネチア3日】第62回ベネチア国際映画祭のプレス試写でサプライズ上映された北野武監督(58)の最新作「TAKESHIS’」が2日夜(日本時間3日未明)、メーン会場のサラ グランデで公式上映された。

 会場には話題作を我先に見ようと大勢のベネチアっ子が集まったが、スター・ビートたけしと役者を目指すコンビニ店員・北野武が現実と空想の世界を錯綜する難解なストーリーに反応はイマイチ。エンドロールが流れても客席の拍手はまばらで、会場真ん中あたりで観客の反応を見ていた北野監督は「ちょっと(テーマが)重かったかな…」とつぶやいた。

 上映後、日本人プレスの取材に応じた北野監督は、「きょう改めて(自分の作品を)観て、これはひどいな、一体誰が作ったんだ、と思ったね。俺が作ったんだけどね」とジョークを交えながら反省の弁。

 「(同作の意図でもあった画期的で)変な映画を描くという意味ではまぁ成功だけど。妙に速い車を作ったらスピードが速くて乗りこなせなくて、降っこっちゃったという感じだね」と苦笑いし、肩を落とした。

 賞への手応えには「グランプリ獲ったら死期が近づきそうだから、いらねーや」と深く考えない様子。「いろんな意味で1つの区切り。次はオーソドックスに巨匠といわれている人たちの真似をして獲ろうかな」と早くも次回作のことを考えていた。
サンケイスポーツ) - 9月4日8時13分更新

ベネチア3日=近藤由美子】北野武監督(ビートたけし=58)が、ベネチア国際映画祭を幻惑した。コンペティション部門に追加出品された2年ぶり新作「TAKESHIS’(タケシズ)」(11月公開)の公式上映が2日夜に行われたが、地元紙が「あなたの演出は分からない」と紹介するなど、ベネチアの反応は? ? ?  「体感する映画。混乱させたい」との狙いがずばり当たった北野監督は「うまく作ったと思う」と会心の笑みを浮かべた。
 ベネチアがキタノワールドの“術中”にハマった。エンドロールが流れると、観客はスタンディングオベーションで賛辞を贈った。だが、北野監督に言わせれば「みんな、やたら映画のことを考えていて、とりあえず残って拍手してる状態」だった。しかし、そんな? ? ?  な反応こそ、北野監督の思うツボだった。
 自分が2役を務め、芸能人ビートたけしが、そっくりな北野武と出会うことで、現実と想像の世界が複雑に交錯していく物語。会場では海外メディアから「あれは双子か」という問いも出た。翌日のイタリア各紙は一斉にこの不思議な作品をトップ記事にした。「想像を超える作品」(イル・ジョルナーレ紙)「すべてにおいて優秀な北野監督。でも『理解しようとしないで』」(レプブリカ紙)「あなたの演出は分からない」(コリエレ・デラ・セラ紙)。最初から「混乱させたい」と意図を語っていた北野監督は「混乱しているのはよく分かる。相当刺激を与えちゃったな。ついていけないような、妙に速い車をつくっちゃった感じだね」とニンマリだった。
 これまでグランプリ(金獅子賞)を競うコンペ部門に3作出品したが「HANA〓BI」(97年)でグランプリ、「座頭市」(03年)で監督賞を受賞するなど相性はいい。今回は過去の作品のエッセンスをちりばめ、自ら「総集編」という集大成的作品だけに、周囲の期待は高まるが、本人は賞レースについて「ま、いらねーな。あまり運がいいと死期が近くなる。北野武役で主演男優賞がいい」とジョークを飛ばしてけむに巻いていた。各賞発表は10日。
(日刊スポーツ) - 9月4日10時1分更新